コラム

Vol.60 グローバル化が進展するとどうなる日本の人事

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2015/04/24

Index

  1. グローバル化が進展するとどうなる日本の人事
  2. 人事制度改革の事例紹介

グローバル化が進展するとどうなる日本の人事

昨年、アジアへ進出する中堅・中小企業の「”失敗しない”人材活用術」を上梓させていただきましたが、執筆の情報収集過程で一番感じたことは日本の人事制度の特異性です。日本だけ、新卒一括採用をやり、社員を育成し、能力主義を導入しています。(世界的と比較するとまだまだ年功的だと思います)

さて、この日本的な人事制度から世界に浸透している職務主義に移行するとどうなるのでしょう?職務主義と能力主義の違いから解説します。

職務主義は担っている職務の価値に対して報酬を支給し、能力主義は所有している能力の価値に対して報酬を支給することです。日本はバブル経済が崩壊した後、成果主義を導入していると思われていますが、まだまだ成果変動の要素は少なく能力主義にあてはまると思います。

まず、職務主義から詳細の解説をします。職務主義導入の目的は「差別の撤廃」です。人種・性別・年齢などの差別を撤廃することを目的として構築されているので、担っている職種・出した成果という客観的にわかる指標で報酬を決めようとする根本思想があります。逆の言い方をすると「差別の撤廃」が第一義なので、職務主義のデメリットは理解しているものの、小さな問題という捉え方をしています。

続いて、能力主義の解説をします。能力主義の前提は、人を育成するということです。新卒を安い給料で採用して、徐々に能力を見つけさせ、能力に見合った貢献を期待するという仕組みです。

さて、職務主義に話を戻すと、基本的に日本以外の国は、職務主義を導入しています。経営を考えると当たり前の話です。私が、タイで工場の立ち上げのサポートをしたとき、必要な職種を全うできる人を採用しました。「財務ができる人」「品質管理ができる人」という採用方法です。当たり前ですが、新入社員を採用して、「財務ができる人」「品質管理ができる人」を育てることは時間的にできません。これが職務主義です。必要な職種に対して、その職種に見合った報酬を払うことで労働契約が成立します。つまり、職務が全うできるスキルがないと雇用されないということです。

ちなみに、職務主義は完全な学歴社会なので、高卒者がマネジャーになることはありません。意欲ある人は、一度会社を辞めて、再度大学に入りなおして、マネジャーの道に進みます。わかりやすくいうと、「職務主義は人材育成を前提としていない」ということです。そうなると、スキルがない大学生は必要ないので就職率が下がるはずです。中国・韓国・タイなどで大卒生の就職率が低いのはこのためです。ちなみに、タイ人にこの問題を指摘したところ、タイの大学では就業のための学習が基本で、生産管理などの実務を教えいるということでした。日本みたいに、基礎研修をやったり、ドラッカーを学んだりすることは少ないようです。

ここで、日本の能力主義に戻りましょう。日本は能力主義を採用しているので、能力をあげるサポートを会社の経費で行います。担える職務は限定されていても、将来の可能性があれば大卒生も採用します。今、徐々にグローバル化が進み、職務主義が進んでいくと思われます。

職務主義が進展すると、
 1.より報酬格差が広がる(世界と同一水準になる)
 2.より学歴社会になる(大卒以外はマネジャーになれない)
 3.大卒生の就職率が下がる(スキルを身につけていないと職につけない)
ということになると予想しています。

それって、幸せなことなんでしょうかね?
私は、日本の新卒一括採用や、能力主義の文化を残した方が良いと思います。

人事制度改革の事例紹介

【事例】(スマホ関連・従業員500名)

ある急成長中のベンチャー企業の人事制度を構築しました。12月に問い合わせがあり、来年の4月に新人事制度を導入したいという依頼でした。3ヶ月という短期間でしたが承知してスタートしました。ただ、スタートすると4月からのスタートにあたり2月中旬の取締役会決裁が必要とわかり、実質2ヶ月程度のプロジェクトになりました。

お客様は、人事部門を総括する常務が担当されて、すべの意思決定に携わって下さいました。印象的なことは、自分は「意思決定することが仕事」という認識があり、瞬時に意思決定されました。人事制度の基本コンセプトも「余計なマネジメントコストをかけない」であり、評価のすり合わせなど無駄な行為は一切省きました。

そのために、一般的にいう評価制度は、コミュニケーションツールにとどめ、報酬を決める評価は、全社評価⇒部門評価⇒個人評価と自動的に決定される仕組みにしました。一切のブラックボックス(絶対評価から相対評価する仕組み)はなく運営することに決定しました。そうなると、人事制度の説明もシンプルになり、常務がご自身で社員に説明されていました。とても、シンプルな制度ができました。

ベンチャー企業とレガシーな企業の意思決定のスピードの違いを感じた事例でした。

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