コラム
社員が行動に移しやすい方針を策定するために~「部門方針策定シート」活用法~
コラム記事
2024/11/07
現場が行動に移しやすい方針とは?
弊社が企業向けの評価者研修を実施する中で、評価制度を円滑に運用するために、方針の受け方・目標管理の展開方法・目標設定の方法などをお伝えしています。そこでよく挙がるのが、「全社方針や部門方針が明確ではない」という問題です。この問題に対応すべく、私たちは「方針とは何か?」「現場にとってわかりやすい方針とは何か?」を追求し、現場が行動に移しやすい方針に関する知見とノウハウを蓄積してきました。
我々は、現場が目標設定しやすくなるよう、方針や戦略を以下のように定義しています。
- 方針とは、時間という経営資源の再配分を伝えるツールであること
- 戦略とは、新たな顧客や商品・サービスを明確にすること
「将来のどの活動に時間を割き、今のどの活動の時間を減らすか」を示す
研修の場で受講者に「方針は何のためにあるのか?」と聞くと、「方向性を一致させるため」という回答が一番多いです。それなら「営業を頑張ろう!」という方針でも方向性は一致しますが、それだけでは不十分です。
私が重要だと考えるのは、経営資源の再配分、特に現場が時間を再配分しやすく(=行動に移しやすく)なる方針であることです。具体的には、「今」と「将来」の違いを明示し、行動を確実に変えてもらうことが大切です。そのために、「将来のどのような活動に時間を割き、今のどのような活動の時間を減らすべきか」を示すことが必要です。
企業にとって、永続すること(ゴーイングコンサーン)が究極の目的です。そして、将来の永続可能性を高めるために、現在の利益を将来に向けて投資することが必要です。経営層がその投資先を決めて、示したものが「方針」です。
一方で、現場のマネジャーにとっては、人・モノ・金の投資を自由に決定することは難しく、最もコントロールしやすい経営資源は「時間」です。つまり、「方針」は現場のマネジャーが、「時間」という経営資源をいかに再配分するべきかを判断するための基軸になるものです。
方針には「削減すべき業務」も明記する
方針には「実施すること=時間を費やすこと」を記載するのが一般的ですが、同時に「削減するべき業務」も明記することを推奨しています。労働時間は限られた経営資源であり、労働時間の削減が求められる昨今では、減らす時間についても具体的に示すことが必要です。
方針を「今」と「将来」で整理する
具体的には、既存のビジネスを「A」、戦略的な方向性を「B」として整理します。
A+(今期の重点課題の改善): 既存のビジネスに新しい施策を打つこと・改善を図ること
B(戦略的な重点課題) : 上位方針で掲げられた戦略的な重点課題
A-(業務の削減・効率化) : A+とBは新たに増える業務であるため、それに応じて削減すべき業務
自部門・自部署で考える重点課題は、現状の改善が多いことが予想されるため、「A(現状)の改善」という意味で「A+」と表現しています。一方で、全社的に展開される重点課題は、中期的な戦略に基づいて課題設定されていると推察されますので、戦略的な方向性という意味で「B」としています。
また、「A+」と「B」を実行するための「時間」を確保するために、削減する業務を「A-」としています。理想的には、「A+とB(実施すること)」<「A-(削減すること)」であるべきです。特に、新たに取り組む「B」という課題は、現状業務を進めるよりも大幅に時間がかかる可能性があるでしょう。
部門方針策定シート活用のすすめ(無料テンプレート)
これらの概念をExcel表にまとめたものが、「部門方針策定シート」です。
各事業部や部門によって独自の型や書式で方針書を作成している企業が多く見られます。内容が統一されていない場合、戦略や重点課題が抜けていたり、逆に情報が多すぎて焦点がぼやけてしまう可能性があります。このため、経営企画側で方針書のフォーマットを作成し、全社での統一を図ることを推奨しています。
また、方針の表現方法については、長文になりがちなWordや、概念的になりやすいPowerPointを避け、Excelシート1枚で表現することを提案しています。
Excel1ページで部門方針を表現できるようにテンプレートを用意しました。ぜひダウンロードして方針策定・展開にご活用ください。
このシートについて、書籍『新解釈|マネジメントの本~自分が変わると周囲が変わる「内省型リーダーシップ」~』に詳しく掲載していますので、ぜひご参照ください。
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新解釈|マネジメントの本~自分が変わると周囲が変わる「内省型リーダーシップ」~
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