コラム

自我の罠~意図行動と反応行動、どちらの行動が最適か?~

2025/02/03

『新解釈│マネジメントの本』でも紹介していますが、私たちは「意図行動」と「反応行動」を選択しながら生きています。

「意図行動」と「反応行動」とは?

「意図行動」と「反応行動」の選択肢があるなかで、どのような行動の選択が最適なのか解説していきます。まずは、「意図行動」と「反応行動」の解説から始めます。

意図行動:本当はやりたい、意図している行動
     (「本当は、〇〇したいけど」の〇〇に相当する部分)
反応行動:無自覚的に選択する、ついついしてしまう行動
     (「ついつい、△△してしまう」の△△に相当する部分)

マネジメント研修などで、自分の意図行動と反応行動を挙げてもらいます。多い回答ベスト3は以下です。

  1. 本当は部下の話をじっくり聴きたいけど、ついつい結論を述べてしまう。
  2. 本当は部下に仕事を任せたいけど、ついつい自分で抱えてしまう。
  3. 本当はしっかり叱りたいけど、ついついオブラートに包んだ表現をしてしまう。

部下に仕事を任せらない状況について、本当はどのような行動を選択するがよいのかを考察していきます。

なぜ反応行動が起きるのか?

まず、なぜ反応行動が起きるのかというと、反応行動は”無自覚な”脊髄反射だからです。

人の脳は、爬虫類脳と呼ばれる生存脳を包み込むように、感情をつかさどる情動脳、さらにその外側に創造脳が発達してきました。人間は創造脳・情動脳・生存脳を保有しているので、創造脳が意図行動を考え、生存脳が引き金となって反応行動が起きると考えられています。人が考えたり、判断したりするときは、必ず生存脳の中にある基底核から体の反応を取りに行くので、どうしても反応に左右されるものです。

人間が自然の中で生きていたときは、生存脳が力を発揮して、敵から身を守る・餓死を回避するなど機能していました。しかし、今は敵に襲われることや餓死することが少なくなったので、生存本能のとして守るものも変化してきています。

どのような行動を選択すればいいのか?

ここから、どのような行動の選択が最適なのか解説していきます。ここでは「妄想」と「生存欲求」を登場させます。

妄想:意図行動を実行に移した場合、起こると想定している最悪のシナリオ
生存欲求:最悪のシナリオが現実化すると失われるもの

研修では、これらを使ってワークを行います。

ここでは、
「本当は部下に仕事を任せたいけど、ついつい自分で抱えてしまう。」
という事例で考えてみましょう。皆さんも一緒に考えてください。

妄想の言語化

まずは、妄想を言語化します。
「部下に仕事を任せる(意図行動)と、起こると想定している最悪のシナリオは何ですか?

研修では、「部下に仕事を任せて、お客様からクレームが来て、部署の評価がさがり、最悪の場合はマネジャーから降格させられる」のような回答が返ってきます。

生存欲求の言語化

次に、「生存欲求」を言葉にしてみます。
「最悪のシナリオが現実化すると失われるものを、「自分の○○」という表現で教えてください」

この問いには、「自分のポジション」「自分の評価」など返ってきます。
われわれ人間は、敵や餓死を回避することから、自分の正しさ・ポジション・評価・価値観・自信などを守る生存欲求に変化してきています。

生存欲求を満たす行動の選択

最後の質問です。
「反応行動を継続すること、意図行動を選択すること、どちらがあなたの生存欲求を高めますか?」

こう問いかけると、「意図行動です」という回答が100%返ってきます。

つまり、ついつい無自覚に反応行動を選択してしまいがちですが、「意図行動を選択すること」が自分の生存欲求を満たす鍵となります。ほとんどの人は無自覚に反応行動を選んでいると思いますが、これは「自我の罠」とも言えるでしょう。ドハマりしないように気をつけましょう。

最後に、反応行動は車の自動運転のようなもので、必ずしも悪いものではありません。しかし、意図行動と反応行動を自覚的かつ冷静に選択できるようになることが理想的だと考えています。

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