コラム

Vol.178 生成AIが人の評価をする時代がやってきた!?

2025/07/01

生成AIが人の評価をする時代がやってきた!?

最近、生成AIを活用することで、評価における公平性の向上や人材育成のスピードアップを図れないか、模索しています。

実際に稼働しているプロジェクトは次のとおりです:

  • 研修参加者の事後課題や研修中のコメントを分析し、昇格基準を満たしているか判定する。
  • 研修参加者の発達段階を把握し、発達段階に合わせた研修を提供する。
  • 1on1ミーティングの内容を要約し、個別レポートを作成して研修の材料とする。
  • 特殊な業界で、新人を一人前に育成する仕組みを設計する(特に業界理解に役立っています)。

これらの取り組みにより、コンサルティングの進め方や研修設計は変化し、業務効率化も大幅に進んでいます。現在は、生成AIを用いて人事評価そのものを実施できるかを検証している段階です。
生成AIで人を評価することについて賛否がありますが、以下に私が考えている活用方法と留意点を述べさせていただきます。

人事評価における成人発達理論の活用

人事評価には成人発達理論を活用しています。理論的な裏付けが明確で、評価軸を統一できるからです。

従来、発達段階の測定は、成人発達理論を修士課程で学んだ複数のアセッサーが担当していました。
しかし人が行う以上、評価にはどうしてもバイアスが入り、手間やコストもかかるうえ、バイアスを完全に排除することは困難でした。加えて、私たちは修士課程で成人発達理論を体系的に学んだわけではなく、発達測定からは一定の距離を置いていました。

ところが生成AIの登場により状況は一変しました。生成AIの最先端モデルは GPQA などの知識テストで博士課程平均を大きく上回る性能を示しており、この技術を発達測定にも応用できると判断しています。アルゴリズムベースの評価は人為的バイアスが入りにくい点も大きな利点です。

現在、生成AIを活用した人材評価プロジェクトには加藤洋平さんにもご参画いただき、貴重なアドバイスを頂戴しています。加藤さんは前述の理由を踏まえ、生成AIによる発達測定の導入にも前向きな提案をくださっています。

生成AIを活用した評価制度の検討

現在検討している生成AIを活用した評価制度は、次の流れを想定しています。

  1. 等級別行動評価基準の改訂
    成人発達理論を基盤に、等級ごとの行動評価基準を再設計する。
  2. 被評価者による文章 記入
    評価項目は5つとし、被評価者に各項目あたり100~200字程度の文章を記入してもらう。
    (1on1ミーティングの文字起こしデータを用いることも可能)
  3. 生成AIによる評価・フィードバック
    提出された文章を生成AIに読み込ませ、評価とフィードバックを自動生成する。
  4. フィードバックの共有と活用
    生成AIが出力した評価・フィードバックを上司と部下で共有し、現状把握・課題設定・次のアクションを協議する。

毎月②~④を実施することで、生成AIの評価結果を基に被評価者が自己評価を行い、上司が一次評価を付与するプロセスの構築を図ります。生成AIの判断に人間の直接観察を組み合わせることで、評価精度が高まり、毎月のフィードバックを通じて部下の気づきを促進し、上司と部下の評価視点も一致しやすくなるでしょう。

想定される留意点

先述の評価プロセスを運用するにあたり、下記の点を踏まえる必要があると考えています:

  1. 上司が成人発達理論を理解する
    部下の発達サインや発達課題を捉えやすくなり、適切な指導につながる。
  2. 1on1 スキルの強化
    生成AI が出力したフィードバックを、部下の気づきや学習につなげるための対話スキルはやはり大切です。
  3. 上司自身へのフィードバック
    上司のコメントや助言も生成AIで分析し、
    上司側の課題や改善ポイントを可視化できる仕組みがあると望ましい。
  4. 評価ロジックの可視化
    評価への納得感を高めるためには、上司・部下の双方が生成AIの評価ロジックと発達段階モデルを十分に理解し、共有することが不可欠です。
  5. 生成AI評価の定期レビュー
    生成AIによる評価を定期的に検証し、必要に応じて補正フィードバックを行うことで、評価精度を継続的に向上させられます。

まだまだ生成AIの活用は試行錯誤が続くと思いますが、加速度的に生成AIが発達するので、早めに生成AI社内導入・活用をおすすめします。

ここまでお伝えした内容について、下記セミナーで紹介します。ぜひ、お越しください。

▼生成AIで人事制度はどこまで構築できるのか?<第三弾:生成AIの人事評価への活用編>
 日時:7月17日(木) 10:00~11:00 オンライン開催
 申込:https://www.growthen.co.jp/seminar/20250717/

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