コラム

経験学習を深める3つの問いかけ

2025/10/01

経験学習とは

経験学習とは、アメリカの組織行動学者であるデイヴィッド・A・コルブ氏が提唱した学習理論です。
経験学習とは、「具体的経験 → 省察的観察 → 抽象的概念化 → 能動的実験」という4 つのプロセスを踏み、このサイクルを回すことによって、人は学習するという考え方です。

なぜ成長スピードに差が出るのか?

経験学習の視点から成長を捉えると、下記のように言えるでしょう。

  • 成長スピードが速い人
    「省察的観察」を丁寧に行い、経験から多くの意味やパターンを抽出できる。結果として「抽象的概念化」や「次の実験」につなげやすい。
  • 成長スピードがゆっくりな人
    体験をしても内省が浅い/飛ばすため、経験が「やりっぱなし」になりやすい。その結果、概念化や実験に進まず、学習のサイクルが停滞する。

経験学習で鍛える“5つの思考習慣”

また、経験学習によって発達促進的な思考習慣を定着させることができると考えています。

時間軸の往復(過去⇄未来)

具体的経験や省察的観察は過去の体験・出来事に基づき、抽象的概念化や能動的実験は未来に向けた構想・試行となる。過去と未来を行き来することで、時間的な視点が鍛えられる。

抽象度の往復(具体⇄抽象)

具体的経験や能動的実験といった「具体」と、省察的観察や抽象的概念化といった「抽象」を往復することで、概念形成力(コンセプチュアルスキル)が養われる。

視点の多重化(自分⇄他者⇄第三者)

省察的観察の過程では、自分の視点だけでなく、他者や第三者の立場から体験を捉え直すことができる。これにより、多様な視点を持つ力が自然と身につく。

認知と感情の統合

体験を振り返る中で、「事実(現実に起こったこと)」と「解釈(自分のとらえ方)」を区別できるようになり、感情と認知を切り離さずに整理できる。その結果、感情を適切に扱う力が高まる。

仮説と実験の循環

抽象的概念化によって仮説(「もっとも確からしいと考える答え」)を立て、能動的実験で実際に試すという循環を通じて、試行錯誤の質が上がり、成果につながりやすくなる。

と成長に寄与するメリットがあるので、ぜひ習慣化してほしいものです。

習慣化のカギは“3つの問い”

文章を書くのが苦手な方もいらっしゃると思います。そこで、経験学習を定着させるための3つの問いを用意しました。この問いを自分に投げかけ、可能であれば日記として書き出したり、生成AIに入力して活用してほしいと考えています。

Q1. 今日あった出来事の中で、特に印象に残った「うまくいったこと」や「うまくいかなかったこと」は何ですか?

Q2. その出来事を通して、どんな気持ち(感情)になりましたか?

Q3. その気持ち(感情)から得られた気づきや、「次にやってみたいこと」は何ですか?

3つの問いがもたらす効果

問いについて解説します。

1. 出来事を学びに変える「入口」になる

Q1. 今日あった出来事の中で、特に印象に残った「うまくいったこと」や「うまくいかなかったこと」は何ですか?

この問いは、「1日の出来事を学びに変える入口」として、経験学習を定着させる最初のステップになります。

  • うまくいったことを探すことで、自分の行動や成果を前向きにとらえ直し、自己肯定感を高めることができます。
  • うまくいかなかったことを見つけることで、課題や改善点を学びの材料に変えることができます。
  • もし「特に何も思い出せない」と気づいた場合は、その日を流すように過ごしてしまったサインかもしれません。気づくだけでも、明日をより主体的に過ごそうという意識につながります。

2. 感情を通じて「深い学び」につながる

Q2. その出来事を通して、どんな気持ち(感情)になりましたか?

2つ目の問いは、「感情を通して自分に軸を戻し、学びを深める入口」として、経験をより意味のあるものに変えるステップです。

  • 感情を伴った経験は記憶に強く残るため、その時の気持ちを丁寧に味わうことで、学習の定着力が高まります。
  • 感情を意識することで、自分に軸が向き、自然と内省が促されます。単なる出来事の羅列ではなく、「自分はなぜそう感じたのか?」を考えるきっかけになります。
  • 感情を扱う習慣ができると、出来事に振り回されるのではなく、感情を学びの資源に変えられるようになります。

3. 気づきを「次の行動」へ送り出す

Q3. その気持ち(感情)から得られた気づきや、「次にやってみたいこと」は何ですか?

そして、この問いは「気づきを次の行動に送り出し、経験を学びとして完結させる」ステップです。

  • 感情を通じて得られた気づきを言語化することで、自分の行動や考え方のパターンに気づきやすくなります。
  • 次にやってみたいことを描くことで、学びが単なる内省にとどまらず、具体的な行動へと移りやすくなります。
  • こうした小さな仮説と実践の積み重ねが、経験学習サイクルを回し、成長を加速させます。

ぜひ、お仕事の帰り道に、3つの問いを自分に投げてみてください。

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