コラム

Vol.50 中国における組織風土戦略

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2013/11/21

Index

  1. 中国における組織風土戦略
  2. HRカンファレンスに出展しました

中国における組織風土戦略

3週間前に上海に行き、日系企業の総経理の方からお話を聞くことができました。中国人総経理2名、日本人総経理2名からじっくりお話をうかがい、中国における組織風土マネジメントについて整理できましたので、皆さんと共有したいと思います。

皆さんの悩みの1つは定着率だと思います。上手にマネジメントしている総経理はこの悩みもクリアしております。結論から言いますと、組織風土が良く、業績も上がっている企業には、2つの特徴がありました。

1つ目は、経営者が「組織風土の設計も考えて、経営をしている」ということで、2つ目は、中国でも「日本本国の経営理念(組織風土)を色濃く反映している」ということです。

1つ目の事例について紹介していきます。中国人の総経理のお話です。日本でも定着率が低い業種の会社で総経理を経験された方のお話です。数千名もの方と面接し、定着率向上に向けて苦労されたそうです。この方の人材活用のポイントは、
 1)会社の雰囲気・文化をどう形成するか
 2)従業員が成長できるプラットフォームをいかに提供するか
 3)給料を上げていく仕組みをどう構築するか
をバランスよくやることだそうです。中国人には会社に対するロイヤルティという概念はないと言っていました(本人は中国人ですが・・・)

以下、詳細をお伝えします。

1)会社の雰囲気・文化をどう形成するか

給料が高くても、会社の雰囲気が悪いとダメ。給料は中の上ぐらいでよい。楽しく仕事ができる環境整備が大切。というコメントでした。誕生日に経営者から手紙を書いたり、本人に内緒で誕生日パーティーを企画したり、海外に社内旅行に行ったり、忘年会でかくし芸大会をやったりと、組織風土作りのために丁寧に企画をしていました。濃い人間関係を築くことで、従業員同士の相互理解を図るとともに、会社の組織風土を構築するということだと思います。

2)従業員が成長できるプラットフォームをいかに提供するか

成長できるプラットフォームには2つの概念があります。会社が成長ビジョンを見せることと、本人のキャリア形成の支援をすることです。評価の時、1人30分の時間をかけて、1対1のコミュニケーションをしている。その時に希望を聞き、今後のキャリアを一緒に考えるということでした。この辺りは日本も一緒ですね。

3)給料を上げていく仕組みをどう構築するか

年2回の評価制度で昇給する仕組みです。業績(結果とプロセス)、態度・意欲などを加味しながら自己評価+上司評価を経て給与改定をするそうです。評価の納得度が大切なので、評価基準はクリアにすることを心がけていました。クリエイティブ系の仕事も基本的に結果主義でした。中国人は従業員同士で給与明細を見せ合いますので、ロジカルに説明できる報酬制度の設計が必要です。

ということで、営業系の総経理ですが、ちゃんと組織・人事のことについても自論が整理できています。

2つ目の事例について紹介していきます。

日本人の総経理の事例です。月1回の朝礼を拝見させていただきました。ちょうど、創業10周年祭を終えた翌日で、催し物の成功の感謝が総経理からありました。副総経理から創業10周年を迎えて「臨時ボーナス」の話があって場は盛り上がり、さらに「日本人スタッフはボーナスなし」という話にも場は盛り上がっていました。総経理を含めた経営幹部が10年後の話やこれからの成長についてなどビジョンを掲げ、社員に5年後・10年後の姿を見せようとしていました。

次に、月次売り上げの振り返りをしていましたが、プロセス管理に関して何人もの部長が同じことを言っていました。
「先月の未達は、2カ月前のプロセスが悪かった」
「今月は、12月の年末商戦に向けてプロセスをしっかりやろう」
という話をしていました。日本以上にプロセス管理に力を入れていました。

最後に、11月誕生日の社員にケーキ券(3000円程度)を渡し、本人たちから一言がありました。
「私はまだこの会社にきて5年ですが、あと10年は働いて創業20周年を迎えたい」
「周囲の先輩方に感謝です。皆さんに恩返しできるように頑張ります」
と、長期にわたってこの会社にいるようなコメントが多かったです。こういったことを言わせる組織風土が定着率の向上に役立っていると感じました。

この会社は定着率が最初から良いということでした。創業当時から本国の理念を伝え、それを具現化してきたそうです。それが会社の中の暖かい雰囲気を形成していると感じました。一方で、非適合人材の排出も考えており、やさしいだけではなく、理念の共有と会社の方向性に合った行動ができる人に絞り込むということは実施しています。

最後になりますが、日系企業の多くが定着率などに苦慮しているのは、営業系の総経理や生産系の総経理が配属になり、人事・組織に関することまで気が回らない、または経験不足だからではないかと感じました。スタッフ系は、配置されたとしても財務系であり、どうしても組織・人事関連は後回しになっているのが実態だと思います。

そういった意味で、
○まずは、現地の従業員と仲間になる(言葉を覚える努力をする)
○本社の経営理念を伝える(中国でも理念を大切にする会社が増えてきました)
○会社のビジョンを明確にする(日本よりはやりやすい)
○組織風土の設計を緻密にやる(創業5年間が大事)
○キャリア設計を緻密にやる(社員の話をじっくり聞く)
ということを、総経理または日本人スタッフが実行できればと思います。

HRカンファレンスに出展しました

去る11月12日(火)にHRカンファレンスに出展しました。株式会社コロプラの千葉功太郎副社長をお呼びして、ベンチャー企業における組織・人事戦略についてお話をお聞きしました。

先ほどの中国の話にも関連するのですが、法人格という「人格形成」のために、創業当時から組織や組織風土づくりをどうするか緻密に設計してきたというお話でした。ちなみに法人の「人格形成」とは、企業は法人であり、法人には「人」という文字が入っているように「人格」がある。その「人格形成」を緻密に設定してきた、ということです。

まとめると、
○創業5年間が組織風土形成の期間
○従業員100名までが組織風土形成の期間
○スモールチームという概念があり、チームの最大人数が決まっている
○マネジメントコストを極力排除する
など、ベンチャー企業における組織風土形成に必要な情報が多数ありました。

ご参加いただいた皆さん、お忙しいところありがとうございました。

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