コラム

【加藤洋平氏監修】~心の成長をデザインする~ 階層別研修の理論と実践方法
2019春HRカンファレンスを終えて

2019/06/20

5月16日(木)のHRカンファレンスにて弊社島森が『【加藤洋平氏監修】~心の成長をデザインする~ 階層別研修の理論と実践方法』をテーマに講演しました。当日は、 成人発達理論の概要、成人発達理論の階層別研修への展開について、簡単にお話をさせていただきました。

参加者の皆さまのアンケート結果および質問への回答をまとめましたので、ご覧ください。

アンケート結果のまとめと解説

発達心理学と階層別教育の興味について、アンケート結果をまとめました。

【心の成長促進という側面で、興味がある研修内容】

アンケート回答:48名、複数回答あり

ベテラン層・管理職層の研修の興味が高いようです。個人的にも、会社の組織風土改革を進めるためにも、役員・管理職層からの導入は効果が高いと思います。ベテラン層の活躍の場づくりはどの企業も課題を抱えているようです。また、働き方改革を進めるにあたり、生産性向上への興味もありそうです。

参加者からの質問に対する回答

ある方のアンケートにこのように記載されていました。

「人の評価や優劣に使用されやすい風土なので、まだ自社には早いと感じた。」

発達理論を理解していただいたことと、自社を客観的に分析できているという点で、秀逸だと感じました。そういった客観的な視点を持てるのは素晴らしいと思います。

どうしても、成人発達理論を活用して人の評価や昇進昇格に使いたいという思いが先行しがちですが、それをグッとこらえて人の評価や判断に使わないという立場を取る会社さんと一緒に連携したいと考えています。その原点に立てるからこそ、社員の育成・評価・選抜にどう活用できるのかを一緒に取り組んでいけると考えております(少々哲学的ですが)。

以下は、アンケートの質問に対する回答ですが、島森個人の見解も含まれます。

【質問1】階層別研修は、多様な発達段階の参加者で成り立つのか?

私も疑問を持って、加藤洋平さんに最初に投げた質問です。そのときの加藤さんの回答は、「研修のフレームがしっかりしているので、多様な発達段階でも効果はあります」という回答でした。

これを私の言葉で解説すると、心の成長の研修ゴールは、「自分の認識の枠を理解すること」「その認識の枠組みを少しでも超えた認識ができるようになること」だと考えています。つまり、日常のビジネスシーンでは、自分が正しいと思っている選択をし判断していますが、この状態から一歩離れることが大切です。

表現を変えると、思考デトックスというか、脳デトックスみたいな感じです。研修の場でゆっくり・緩んで他の人の認識を聞いたり、自分の内面を見つめる余白を持ったりすることができれば、発達段階の階層を問わず、心の発達の促進につながります。

【質問2】社員の発達段階をどのように測定するのか?
【質問3】実際は、発達段階をどう評価に活用するのか?

詳しくは、『心の隠された領域の測定:成人以降の心の発達理論と測定手法』オットー・ラスキー(著)、加藤 洋平(訳)をお読み頂きたいと思います。

測定する領域は、社会的・感情的および認知的発達を取り扱います。私なりの表現をすると、社会をどう認知して、どのような欲求・不安という感情と向かい(発達段階によっては無自覚)、どのように判断して行動しているのかを丁寧にアセスメントすることになります。表面的なアウトプットだけではなく、内面の感情や思考にも触れながら、どのような行動を選択しているかをアセスメントします。アセスメント方法は、1.5時間程度のカウンセリングで実施しているので、測定は学術的な分析にとどまっています。また、心の測定ができるレベルまで、知的な技能を身につけるまでには大学卒業レベルから1.5~2年ほどかかるらしいです。

加藤さんは、クライアントの文章による簡易アセスメントをすることは可能だとおっしゃってます。個人的な見解としては、社員の優劣をつけるためのアセスメントから導入することは避けた方が良いと思います。一方で、本人の成長のために、本人に成長段階を認識してもらうことは有効だとは思います。

成人発達理論を学習していくと、測定したり、判断したりという欲求は減少します。活用の場面としては、自分の内的成長と、部下の成長促進のために活用できたら良いと考えています。

【質問4】その発達を味わいつくす状態、発達促進のバランスをどう考えるのか
【質問5】人事部門としてサポートできることは何か

大きな発達として、安定期・変容期があります。個人的な体験ですが、安定後期には、違和感・疑問・揺れなどの感覚の頻度が増します。変革期になると、これまで正しいと思っていた解釈が変わる出来事が頻繁に起きます。その解釈の展開の連続により、新しい段階に移る感じです。

ただ、どの段階でも小幅な変容はしており、安定期に変容は必要ないという訳でもないです。この変容には内省が一番です。毎日、自分の思考・感情・行動を振り返ることで、自分の認知の枠組みを理解できます。これは、スキルだと思っています。情報としては理解できますが、やはり体験を通して身に着けるスキルだと考えています。

人事部門が心の成長促進も役割なのであれば、是非取り組むべき課題だと認識しています。

  • 心の安全性(やりがいを持って、心を病むことなく)確保のため
  • お互いのコミュニケーションレベルの向上(管理職研修で一番効果があると思います)
  • 阻害行動の減少による生産性の向上
  • 自分に卑屈になる社員の減少(発達段階という切り口で自分の人生を選択できるかもしれません)
  • 心の取り扱いのリテラシー向上で、友達・家族関係のコミュニケーション向上

などの効果があると思います。

そういった意味で、人事部門としては内省ノートをつける習慣作りの定着が良いと思います。1日5分でも自分の内面を言語化することで、ガラッと会社は変わると思います。自分の中では、内省の時間を確保することが、何をやるより生産性を上げると考えています。

【質問6】教育体系を構築したい
【質問7】研修の事例が欲しい

人事制度・教育体系などの構築はできると思います。ただ、まだ試行錯誤しながら策定していくことになると思います。どの施策もそうですが、自社にカスタマイズしていくことが効果的な運営につながります。

ただ、成人発達理論の導入を進めるにあたり、プロジェクトメンバーは成人発達理論を学びながら、発達段階が上がる傾向にあると思います。そうなったときに、最初に設定した目的やゴールが変わる可能性があります。

設計の流れは、成人発達理論の理解→問題点の再設定→設計という流れになると思います。

「他社事例が欲しい」「データが欲しい」というお客様の会社は導入が進まないことは分かりました。とても他社事例・データで上司を説得できる領域ではありません。現在進めている企業様は、役員がやりたいとスタート、担当者の熱意で巻き込みながらスタートしています。

【質問8】発達段階の上位の人を昇格させる・発達段階の高くなりそうな人を採用するためには?

ここまで解説してきたので、上記のような活用方法はしない方が良いと思います。と言いながら私が考えている活用方法は、弊社が開発しているようなNAICANノートを3カ月ぐらい書いてもらい、それをアセスメントすることは可能かと思います。

今年から、新入社員研修のフォローアップとして、NAICANノート(経験学習モデルの定着)を導入しています。単純な話ですが、文章を書く量と日常の学ぶ姿勢が連動します。昇進・昇格についても、例えば「主体的な行動について今日やったこと」「部下の育成について今日やったこと」を書いてもらえば、その人の内面をある程度理解できると思います。書くことで、本人も内省できますし、心の治癒作用もあります。

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