コラム

Vol.13 残業手当を支払わない会社・残業手当をもらわない社員

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2009/03/17

Index

  1. 残業手当を支払わない会社・残業手当をもらわない社員
  2. HRD JAPAN 2009 に参加して(株式会社サトーの三行提報)

残業手当を支払わない会社・残業手当をもらわない社員

先日ユニークな経営で脚光を浴びている「未来工業」の瀧川社長のお話しを聴く機会がありました。普通の経営をしている経営者・社員からするびっくりするような経営をしているのですが、よく人間の本質をついた経営をしていると思います。そのひとつに、「社員に報酬を意識させないで仕事をやらせる環境作り」があります。

一例でいうと、私も残業手当をもらったことがありません。偶々ですが残業手当という概念を持った会社に勤めたことがありません。それが今の自分の糧になっていると最近痛感してます。

まずは、自分が最初に勤めた出光興産という会社の紹介からです。
1.会社の資本は人(だから資本金はほんのわずかでした)
2.社員はクビにしない(戦後の厳しい時期も解雇しませんでした)
3.タイムカードはない(残業・有給休暇・欠勤などという概念もありません)
4.報酬は生活給、仕事の報酬は仕事で返す
5.等級制度・報酬制度は一切分かりませんでした(就業規則も見たことありません)

不思議なのは、「社員が活き活き働いている」「社員が一度も労基署へ駆け込んだことはない」ということです。反対にサボる人は多少いますが・・・権限・職務範囲という概念がないので、仕事を自分で作って、自分で実行するので楽しいのです。3ヶ月ぐらい休みなしで働いたことがあります。精神的には全く苦になりません。肉体的にはつらいですが。そういう意味では、社員を働かせるには上手な仕組みでした(笑)。

次に、未来工業の紹介です。未来工業は、電気設備資材・管材を作っているメーカーですが、

1.年間143日の休日+有給40日(消化率8割)の会社
2.残業は一切ない会社
3.タイムカードがない会社
4.800名なのに人事部門は1名の会社
5.食堂に食券がない会社(誰もごまかさない)
6.報告・連絡・相談を禁止ている会社
7.教育も自主性を尊重し、費用の100%を負担する会社(仕事とにリンクさせていない)
8.定年が70歳の会社
9.完全終身雇用・年功序列の会社
10.制服もない会社

瀧川社長はこんなことを言っていました。
1.中小企業で、人・物・金がなかった。だからとことん「人」にこだわった。
2.社員を信じること。それで成果がでなかったら経営者の負け。
3.タイムカードは無駄。その投資も無駄だし、それを計算する人件費も無駄。
4.経営とは「社員に感動を与えること」

普通の経営論では、絶対に出てこないようなコメントです。でも社員の心を本当に捉えている会社は同じようなことを実践していきるという感想です。真に社員ことを考えると同じようなアウトプットになるということでしょう。人間本来の力を社員に出してもらうためには、社員に報酬を与えることではなく、社員を信頼することだということが良く分かります。

エドワード・デシという心理学者が「人を伸ばす力」という本でも、人は報酬を与えると物事への動機づけが弱くなるという実験結果を掲載しています。

報酬を意識させないで、労働する環境をいかに作るかだと思います。出光興産は残業手当を支払わない環境作り、未来工業はそもそも残業時間を発生させない仕組みと違いますが、人間本来の力を引き出すには大事な要素だと思います。

HRD JAPAN 2009 に参加して(株式会社サトーの三行提報)

「三行提報」で有名な株式会社サトーの取締役経営顧問の藤田東久夫氏から話を聴きました。「三行提報」とは、社員に毎日提出することが課せられた「三行の日報」です。誰が読むのかというと、管理職を飛ばして直接社長が読むのです。だから、社長に直接現場の情報が入ります。

藤田顧問のお話で印象深かったのは下記の通りです。
1.バブルがはじけて大赤字の時、頭に来たので社員研修をどんどんやった。他の会社のやらない策をやることが大事
2.小さな倹約・大きな浪費で社員のやる気を引き出した
3.本支店間でいさかいが発生したときは、双方のTOPを入れ替えた。お互いまったく反対なことを言い出した
4.若手社員の3名を経営会議に参加させるようにしている(発言権はなし)
5.経験はお金なので、能力主義的な人事制度の運用をしている
6.役員は53歳で定年
7.経営の自信・人を育てる自信がついてきた

ひとことで言うと面白いおじさんです。話が上手でしたが、社員が動かす言葉を発するのが上手だと思いました。感じたことは、未来工業の瀧川社長と同じようなことを言っていると感じました。やり込んだ社長は、どこか同じような考えに収束するような感があります。

一番印象深かったことは、「経営の自信」=「人を育てる自信」つまり、経営=人材育成というコメントでした。これが分かっていない社長が多いと思います。

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