コラム

Vol.160「ありたい姿」の描き方

2024/02/26

「ありたい姿」の描き方~ありたい姿は定性目標で表現する~

目標には「定量目標」と「定性目標」がありますが、ありたい姿は、基本的に複数の定性目標で構成されます。もちろん、構成要素として定量目標を含めても結構です。

まず、火消し型問題解決と設定型課題解決について説明します。

火消し型問題解決とは、現在に焦点を当て、許容値を超えた問題に対して元の状態に復帰するための手法です。設定型課題解決とは、将来に焦点を当て、ありたい姿を設定し、現状とのギャップから生じる課題を解決する手法です。

二つの違いは、現在を分析しているか、将来を構想しているかにあります。そして最大の違いは、火消し型問題解決が一つの問題に対処する手法であるのに対し、設定型課題解決は複数の、場合によっては100以上の問題解決を同時に構想・シミュレーションする点です。

ここで、研修で演習での事例を紹介します。

講師の「工場の半年後のありたい姿を挙げてください」と問いかけたところ、受講者が「故障・トラブルの前に保全できる力をつける」と回答しました。この回答に対し、講師が様々な切り口で質問を投げかけると、講師が様々な切り口で質問を投げかけると、 受講者は以下のようなありたい姿を具体的に述べました。

  • 現在は事後対応を行っているが、6割程度は予防保全に切り替えている状態(定量目標の視点)
  • マネジャー間での情報共有が行われ、異常や消耗部品が共有されている状態(情報共有の視点)
  • メンテナンスの交換頻度の見直しが行われている状態(メンテナンスの視点)
  • オーバーホールでの課題抽出が行われ、予防能力が身についている状態(人材育成の視点)

ありたい姿は単一ではなく、複数の視点での問題解決をシミュレーションし、それが部門や部署の「ありたい姿」となります。複数の視点で考えることで、解決する問題の数が減少します。上司が明確なありたい姿を描けていれば、部下も問題解決する数が少なくなります。

火消し型問題解決ばかりしているマネジャーの組織がバタバタと忙しいのは、「ありたい姿」がないまま、目の前の問題解決に終始していることが主要因だと考えています。

ここで、部下に「ありたい姿」を伝えるときの留意点をお伝えします。

マネジャーが、100の視点でありたい姿を構想し、部下に文章で伝えても、そのうちの1%程度しか表現されていないことが多いです。部下と対話する場を持っても、10~20%程度が明らかになる程度でしょう。ありたい姿の大部分は、マネジャーの頭の中に隠れたままです。

マネジャーは、しばしば細かい指示を出しがちですが、そうすると部下はありたい姿の概念を理解する機会を失います。部下がありたい姿を理解すれば、自律的に動くことが容易になります。

したがって、マネジャーにとって最終的なミッションは、ありたい姿を継続的に語り続けることです。忙しいとは思いますが、ありたい姿を語り続けることが、目標の達成の視点、部下育成の視点で大切なことだと思っています。

最後に、これまでのお話を通じてご理解いただけたと思いますが、ありたい姿を表現する際には、定量目標よりも定性目標の方が機能します。そのため、定性目標を定量目標で表現しようとすると、ありたい姿の一部分しか捉えられないことになります。したがって、無理に定量評価で表現するよう指示することは、ありたい姿を劣化させる行為に他なりません。

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