コラム

Vol.179『ダイナミックスキル論』を読み解く~自己成長と成長支援のための実践的ヒント~

2025/07/30

『ダイナミックスキル論』を読み解く~自己成長と成長支援のための実践的ヒント~

加藤洋平さんのゼミで、カート・フィッシャー氏の『ダイナミックスキル論』を5週間にわたり学びました。その内容を、自分の知見も踏まえて、皆さまに共有したいと思います。自己成長や成長支援のヒントが少しでも参考になれば幸いです。

成長は「停滞期」と「急成長期」の繰り返し

人の成長は直線的ではありません。停滞期と急成長期を交互に繰り返します。

停滞期とは?
現在の能力の枠組みの中で、経験や知識を蓄積する期間です。
まるで「コップに水を注ぐ」ようなイメージです。

急成長期とは?
蓄積された経験がある限界を超えると、新しい能力の枠組みが構築され、一気に成長する期間です。
「コップの容量が大きくなる」ような変化が起きます。

▼ 自己成長のヒント:今この瞬間を大切にする
現在の段階での経験が、次の成長の糧になります。
忙しさに追われて「仕事をこなす」ように過ごしがちですが、一つひとつの体験に意識を向けて、深く味わうことが成長につながります。

▼ 成長支援のヒント:揺れる時期を支える
急成長期は混乱や不安を伴い、一時的にパフォーマンスが不安定になります。
支援者は「この混乱は成長の証拠。必ず抜け出せる」という安心感を伝えることが大切です。

「背伸び」の経験が実力を底上げする

整った支援環境で、一時的に高いパフォーマンスを発揮する「小さな背伸び」の経験を重ねることで、日常的な実力が底上げされます。
※心理学者ヴィゴツキーの「最近接発達領域(ZPD)」という考え方が参考になります。

▼ 自己成長のヒント:憧れの人を見つける
自分にとって憧れの存在を設定し、その行動を真似たり教えを乞うことで、学びが加速します。

▼ 成長支援のヒント:適切な課題を見極める
ZPD(最近接発達領域)とは「一人では難しいが、支援があれば達成できる課題」のことです。
観察や対話でこのゾーンを特定し、手を差し伸べましょう。
本人に「これは一人でできそう?」と問いかけるのも効果的です。

発達のプロセス

人間の発達は以下の三層構造で進行します。
ステップ:日々の小さな変化や気づき(例:ひとつの行動に対する理解や反応の改善)
レベル:ステップが積み重なって生じる質的な変化(いわゆる「発達段階」が変わること)
ティア:複数のレベルが統合されて現れる、ものの見方や世界観の次元が変わる変容(よりメタな視点への移行)

▼ 自己成長のヒント:目的意識を持って取り組む
同じ体験でも「どう意味づけるか」で学びの質は大きく変わります。
目的意識を持って取り組むことが、成長の差を生みます。

▼ 成長支援のヒント:小さな変化を見逃さない
外から見て成長していないように思える人も、実は細かな進歩を遂げています。
それを発見してフィードバックすることで、本人のモチベーションが高まります。

成長スピードを高めるには

成長には「促進要因(アクセル)」と「抑制要因(ブレーキ)」が存在します。
支援するときは、両面に目を向けましょう。

▼ 自己成長のヒント:内なるブレーキを見つける
意図的に避けている仕事や後回しにしがちな課題を振り返り、その背景にある「恐れ」や「劣等感」を探ってみましょう。

▼ 成長支援のヒント:ブレーキを外す手助けをする
感情ケア、意味の再解釈、環境調整、体験の振り返りを通じて、ネガティブな感情を解消し、「自信」というエネルギーを注入します。

感情が成長のエンジン

感情は行動の設計図として機能し、思考・経験・身体反応をつなぐ重要な役割を果たします

▼ 自己成長のヒント:感情を言語化する
自分の感情を書き出し、「この感情のときはパフォーマンスが上がる」「この感情は注意のサインだ」と捉えることで、感情をコントロールする力が高まります。

▼ 成長支援のヒント:ポジティブな感情を引き出す場をつくる
「楽しく仕事ができる」環境を整えることで、自然と成長が促進されます。

まとめ:成長のカギは「主体的な意味づけ」

ダイナミックスキル論から学んだ最も重要なポイントは、成長における「主体的な意味づけ」の力です。本人にとっては、与えられた環境や機会を「どう受け止め、どのように主体的に向き合うか」が成長を左右します。支援者の役割は、環境を整え、感情的な土台を築き、「積極的に楽しめる状態」をつくることです。そして最も大切なことは、支援者自身が「支援すること」を楽しむ姿勢を持つことです。これこそが、最も重要な成長支援の鍵となります。

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この学びを皆さんと共有したく、夜の楽校を開催します。テーマは「ダイナミックスキル理論」を子育てにどう活かすか。加藤洋平さんのゼミでご一緒している学習ファシリテーター・高橋美佐さんをお招きし、共に学びを深めていきます。

成人発達理論やダイナミックスキル論に関心があり、子育てに活かしたいと考えている方、子育てに迷いや悩みを感じている方のご参加をお待ちしております。

▼【夜の楽校】ダイナミックスキル理論に学ぶ“子育てのヒント”
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