コラム
人材育成を進めるにあたっての留意点
コラム記事
2021/08/04
執筆者:島森
2021年8月の現段階で、島森が考えている持論です。一風変わった視点で人材育成の限界をお伝えします。こちらをご一読いただき、マネジャーの皆さんの肩の荷が下りたら幸いです。
「人材育成の限界」
「人材育成することで部下のパフォーマンスを落とすことも」
「部下の問題を解決しようとするのは時間の無駄」
という視点で解説していきます。
人材育成はするべきだと思いますが、力を入れすぎたり、力をかけすぎたりすることで、逆に成長支援の弊害が起きそうなので、少しフラットな立場で関わることをおすすめします。
1.人材育成の限界
人材育成の限界を、「能力・性格の視点」「成人発達理論の視点」でお伝えしたいと思います。
能力・性格の視点
部下の良いところに焦点あて、強みを発揮させる
緻密性のない人の緻密性を高めることや、消極的な人に積極的に動いてもらうことは難しそうですよね。こういった資質的な能力・性格は、本人の脳の構造や親・教師などのしつけ(無意識に染みついた習慣)の影響もあります。
以前読んだ本によると、24時間・365日体制で指導すると、能力的な改善も図れるそうです。王貞治を育てた荒川コーチは、王貞治(当時は毎日銀座に飲みに出歩いていたそうです)を自分の家に下宿させたそうです。そこまでやらないと能力・性格の改善は図れないと感じ取ったからでしょう。
ビジネスの視点では、部下を自分の家に合宿させ、24時間・365日体制で鍛えるのは、かなり実行のハードルが高いので、能力・性格の改善はあきらめざるを得ないと考えています。とすると、部下の能力・性格の良いところに焦点をあてて、実力を発揮しやすいポジションを与えるしか方法がないように思います。
成人発達理論の視点
人材育成は5年後10年後の長期スパンで考える
成人発達理論の発達段階の影響で、「積極的に行動するのを避ける傾向にある段階」「部下の育成より、自分のスキル発揮に躍起になる傾向がある段階」「自分の正当性を守るために、自分の意見を曲げない傾向にある段階」などがあります。発達段階は、その段階を味わう局面、次の段階に向かって準備する局面があります。次の段階に向けて発達を進め、安定するまでに、人によって5年~10年かかると言われています。
夢がないですが、上司・部下との関係が3年ぐらいだとすると、発達段階が上がるのを見届けるのは難しそうです。発達段階を上げるためのサポートは、もちろん必要ですが、花開くのはだいぶ先になりそうです。
そういった意味で、育成対象者が自分の部下の時代に花開くために人材育成するのではなく、5年後・10年後に活躍して欲しいと願うぐらいの長期スパンで考えた方が良さそうです。
「能力・性格の視点」「成人発達理論の視点」で人材育成の限界をお伝えしましたが、マネジャーの皆さんが、自分が部下の育成をしないといけないと思っていたり、部下との関係にイラついていたり、業務負担になっていたりしたときに、少しでも肩の荷がおりたらいいなと思っております。
適材適所の視点で、パフォーマンスが上がるように役割分担して、それを見守りながら支援するぐらいが良いと思います。
2.人材育成することで部下のパフォーマンスを落とすことも
上司フィルターを通した「部下にこうなって欲しい」は、本当に部下のため?
人材育成とは、その名のとおり「人を育てる」ことです。一方で、人材育成とは、会社や上司にとって「都合が良い」人を育てるという前提が隠れていると感じています。
人間には、その人独自の捉え方があるので、上司部下の関係では、下記のような「上司の捉え方」が考えられます。
・会社の都合と思っているものも、上司の捉え方である可能性がある。
・「部下にこうなって欲しい」は、部下のためではなく、上司の都合の可能性が高い。
・部下を観察するプロセスで、上司独自のフィルター(捉え方)が必ず入る。
このような視点で考えると、部下のために「こうあって欲しい」は、上司の単なる幻想である可能性があると考えています。部下のことを十分に理解しているつもりでも、それは上司側の偏見が内包されていることにも気づかないといけません。
「部下の資質や力量はこうである」「部下にこうあって欲しい」などを伝えて、理想の姿に向けて指導することで、部下本来の資質や能力を開花させるよりも、それを抑圧したり、逆にやる気をそいだりする可能性があることを十分留意した方が良いと思います。
人材育成が本当に得意だと思っている人は別ですが、それ以外の人は、許容できる範囲(これが狭いと厄介ですが)で、部下のやりたいようにやらせて、部下なりの最適なプロセスで成果を出してもらうことで十分かと思います。
部下に「何をして欲しいか(成果)」を伝えて、「何が分からないのか・不足しているのか」を聞き、やり方は部下に任せるのが良いかもしれません。困ったら、相談に来てほしいぐらいのメッセージが良いかもしれません。
3.部下の問題を解決しようとするのは時間の無駄
部下側の問題は解決できない
これは私だけの体験かもしれませんが、気になる部下がいると、仕事の時間以外もその部下のことが気になってしまいます。
(どう、指導すればいいのか)
(どうやったら理解してもらえる)
(どうせ、またやっていないだろう)
(何度言っても伝わらない)
など、悶々としている時間が結構ありました。
これって、自分の気持ちも疲弊させるし、部下のことを気にしている時間は何も生み出さないし、相当無駄な時間だと気づきました。勢い余って、部下に厳しい口調で話をしたり、イライラを抑制しながら部下とコミュニケーションしたり、お互いにいいことが何もありません。
いずれにしても、部下側の問題は解決できないことを知りました。部下側の問題は部下の問題であり、部下本人が解決する問題です。上司側にも捉え方があり、その捉え方と向き合う方が、何倍も効果が出るように感じます。
自分の認識には限界がある。部下を尊重し、お互いに考えていることを交換(対話)することが大切
いろいろだらだらと書きましたが、結論としては、自分の認識には限界があり、部下を変えることにも限界があるので、部下の存在を尊重して、お互いに考えていること交換する=対話することが大切で、上司側としては、部下に何かになって欲しいという意図を持たない方が良いと思っています。フィルターを通さずに、部下の考え・意見を聞くことで、自分の視界が晴れることもあるので、力を抜いたコミュニケーションが必要かと思います。
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