コラム

”あなたのための心配”が相手の支配につながる

コラム記事

2023/04/20

私は昔から「心配は自己都合」と考えてきました。結論から言うと、「心配するのは自由、しかし、その心配で相手を支配することはやめましょう」ということです。この考え方は、親子関係に限らず、ビジネスでも応用できるものです。

心配は良くないことが起きるという妄想

心配は、良くないことが起きるかもしれないという妄想です。子供が危ないことをして怪我したらどうしよう、自分の意思決定が失敗に終わったらどうしよう、部下がトラブルを起こしたらどうしよう、など身の回りには沢山の心配事があるかもしれません。しかし、それは現実ではなく、まだ起きていない妄想に過ぎません。

問題なのは、その妄想がその人固有の想定であることです。子供たちがプールで大はしゃぎしているとき、子供たちが危ない目にあうことを想定する人もいれば、周囲に迷惑をかけて、自分の立場がなくなることを想定する人もいるでしょう。子供たちが楽しんでいる姿を微笑ましく思う人もいるかもしれません。捉え方は人によって様々です。

その妄想が固有なものであることを忘れたり、妄想と現実の境目があいまいになったりすることが問題です。どのような妄想を持っていても構いませんが、子供や部下を叱る・指導する前に、一息おいてその行動を保留できればよいと思います。もちろん、一息おいて、叱る・指導することは1つの選択肢としてあります。

思考も妄想も現実化する

「思考は現実化する」といいますが、これは自覚的な思考と無自覚的な思考の両面が現実化すると考えています。

心配、その背後にある無自覚な妄想に支配されることで、子供が怪我をするかもしれない、自分の意思決定が失敗するかもしれない、部下がトラブルを起こすかもしれない、といった妄想が現実化する可能性を高めてしまうかもしれません。

心配という感情がわき起こったときに、自分の中にどのような妄想があるのかを言語化してみるとよいでしょう。自分の無自覚な内面領域まで、丹念に観察できるようになると、やっぱり思考は現実化することに気づけます。

「あなたのための心配」は本当に子供や部下のため?

子供を叱るときに「あなたのために、・・・」、部下を叱るときに「お前のためを思って、・・・」と表現することがありますが、その裏にあるのは、自己保全です。

妄想を紐解いていくと、
 子供が怪我をしたら、管理不届きで自分が責められる
 自分の意思決定が失敗したら、上司からの評価が下がる
 部下がトラブルを起こしたら、自分の時間が失われれる
というように、「あなたのため」と言いながら、自分が傷つきたくないという恐れが見え隠れします。これは、人間の生存本能なので抗えないものです。心配という感情が生じたときに、自分は自分の何を守りたいのかを言語化してみるとよいでしょう。ここまで自己分析していると、かなり冷静になれるでしょう。

また、心配しすぎて、子供や部下の行動を何かしら抑制すると、その後の成長の芽を摘んでしまうかもしれません。子供も部下も、いかに成長を妨げないことに留意できるかがカギだと思っています。

最後に、「あなたのために心配している」という表現は、相手をコントロールできる魔法の言葉です。子供や部下がこの言葉を聞くと、言うことを聞かざるを得ません。否定できないからです。心配すること自体は自由ですが、心配によって自分自身や他人に対する行動を制限し、成長の機会を奪ってしまわないように注意しましょう。もちろん、本当に危険だったら、しっかりアドバイスしましょう。

「個と組織の成長を考えるメールマガジン」購読のご案内

グローセンパートナーのセミナー情報や、メンバーによるお役立ち情報をお伝えしています。

登録はこちら