コラム

~心の成長をデザインする~成人発達理論を応用した階層別研修への展開事例
HRカンファレンス2020春を終えて

2020/05/20

Index

  1. 講演を終えて
  2. 皆さんのコメントに対する所感
  3. 頂いたご質問への回答

5月12日のHRカンファレンスにて弊社島森が『~心の成長をデザインする~成人発達理論を応用した階層別研修への展開事例』をテーマに 成人発達理論の概要、成人発達理論の階層別研修への展開について、お話をさせていただきました。 参加者の皆さまから頂いたコメントやご質問に対して、所感と回答をまとめましたので、ご覧ください。


1.講演を終えて

成人発達理論を学び始めたときは、「人が幸せになれる」「人のパフォーマンスが上がる」などが目的でした。この理論をきっかけに、会社を有名にしたい、ビジネスを成功させたいという考えももちろんありました。

しかし、成人発達理論を学べば学ぶほど、その奥の深さを理解するとともに、人間の理解の難しさを感じます。また、実践を進めるほど、上記のような欲(エゴ)がなくなり、単純に自分の発達促進に興味がある感じです。

いまは、自分の発達への興味が主、会社組織への展開が従という感じで、時間を割いております。昨年から、LIFESHIFT休暇に入っており、50%働き、50%は自由に時間を過ごすことをしております。最近は、コロナで動けませんが、散歩などを通して自分の中を見つめ続けています。

さて、HRカンファレンスで皆さんの反応が良かったことや、想定以上にご質問が多かったので、折角の機会なので、できる限りお答えすることしました。こういったことにも時間を割けるのは、リモートワークの恵みという感じがあります。

2.皆さんのコメントに対する所感

まずは、参加者の皆さんのコメントから感じた所感です。

①成人発達理論を組織に導入する目的

成人発達理論を企業に導入する際の一番の目的の1つは、「肚を割って話ができる」環境の整備だと思います。役員含めて、会社が危険な場所(評価が下がると首になる、相手の言いなりになると仕事が増えるなど)だと思い込んでおり、この状態ではお客様を向いた仕事はできないですし、全社員が自分を隠したまま、仕事をしたふりをしたり、学習したふりをしたりすることになります。

ほとんどの人が、自分の中のエゴと、本当の自分が未分離なために、ついつい生じる反応行動にばく大な時間を費やします。経営資源の1つの大切な時間は、自己防衛のための時間に消費されてしまいます。

まずは、ここから脱皮したいですね。お客様のため・社員のため・会社業績向上のため、ここは避けて通れない道だと思いますし、本質をずらした社外・社内の提案が多く、問題解決が問題を生み出し、多忙を生み出している原因かと思います。

そこに気づいた会社から、そこに気づいた担当者から、導入を進めて行ければと思います。そこに気づけた会社・導入を進めた会社に、人が流入する時代がもう到来しています。優秀な人材を確保したいのであれば、自社の組織風土を整えるところから着手するべきだと思います。

②成人発達理論の企業導入の難しさ

成人発達理論を企業に導入していく難しさは、皆さんが認識している通りだと思います。役員のエゴが表出したり、主体客体を理解してもらえなかったり、逆に導入を進めることに対して自分のエゴがブレーキを掛けたり。それが現状であり、しばらくは致し方ないと思います。

僕自身も成人発達理論を学び、実践していきながら、自分の認識もどんどん変わりました。そしても、現在も目まぐるしく変化しています。僕の中では、成人発達理論を使って社会を変えようとか、会社を良くしたいとかという執着もなくなり、自分なりにこの過程を楽しむだけという感じです。

結局、人間は「気づき」が一番大切で、成人発達理論という考え方を学ぶ過程での気づき、導入をトライする過程での気づき、導入してみての気づき、どれも気づきなので、皆さんの現時点で最高の気づきが得られればと思います。

本当の自分は、経験を通して、楽しんだり・苦しんだりという体験を求めています。その体験を素直に受け入れることが人生の目的の1つなので、うまく行く・うまく行かないも含めて、割り切って、超越して体験してみるというスタンスが大切かもしれませんね。

③最後に宣伝

成人発達理論の観点で、評価制度についても言及した本を出版します。題名(仮)は、下記の通りで、「発達段階ごとに評価方法も異なるのでは?」や「発達段階によって目標管理が機能する・機能しない段階がある」などについて解説しております。

「今の評価制度に疑問を感じたら読む本」
~組織の成熟度を上げるための新しい評価とは~

日本生産性本部・生産性労働情報センターから、今夏刊行予定ですので、出版が確定しましたら、またご連絡差し上げます。

3.頂いたご質問への回答

ここから、Q&Aという形でお答えします。

Q1. 階層の中でも発達レベルが異なる多種多様なメンバーがいる中で、階層別研修に効果があるかが疑問です。

【回答】
私が最初に加藤洋平さんに投げかけた質問も同じです。加藤洋平さんからは、「研修のコンテンツがしっかりしていれば、その発達段階に応じた気づきが誘発されるので有効です」と回答をいただきました。その後、研修コンテンツも加藤洋平さんに確認してもらいました。

少し補足すると、一人の発達段階は前後の1つぐらいは含みつつ歩みますので、メインの発達段階が3.5の人でも、3.0の気づきもあれば、4.0の気づきもあります。

私が、加藤洋平さんにインテグラル・コーチングを受けたときの課題に、自分のエゴ的な行動に、どの発達段階からの影響を受けているのか?と振り返る課題を貰ったことがあります。自分ではほとんど意識していなかった、3.0の不安が自分の中で一番大きいと発見できました。

研修は、対象者の発達段階を想定して(必要な場合はインタビューして)、コンテンツを設計します。また、研修は対話型で進めていきますので、「気づき」を誘発しやすく設計しています。一番大切な要素は、「内省」とは何か、「内省の習慣化」なので、フォローアップも重要な要素として研修を組んでおります。

Q2. 発達段階をどのように測定すれば良いのでしょうか?

【回答】
現在、日本において発達段階を測定する方法はございません。海外でも学術的な統計はありますが、ビジネスの世界での活用になると余り事例はありません。加藤洋平さんが属していたアメリカの「レクティカ」という組織が測定ツールを開発・提供していますが、日本の企業で活用したという事例は聞いていません。一度、加藤洋平さんと、 研修のBefore⇔Afterで発達段階を測定することによる研修効果測定を検討しましたが、 費用対効果が合わずに断念しました。まだ、発達段階と企業内のパフォーマンスの関係性が学術的に明らかになっていないので、まだこれからという段階かと思います。

我々も、発達段階の促進というより、自己理解の促進や人材育成スキルの強化という観点で成人発達理論を研修に盛り込んでおります。この辺りを丁寧に理解して導入しないと、やれ評価だ、測定だという側面が強調されることになり、それは使い方が少し違うなと感じます。

Q3. 反応行動というのはネガティブなものしかないのでしょうか?反射的にポジティブな反応ができるというのも成長だと思うのですが。

【回答】
セミナーで触れることができませんでしたが、おっしゃる通りポジティブ反応もあります。反応行動には、プラス部分もマイナス部分もあります。だから、反応行動はすべてが悪いわけではないです。良い部分は残しつつ、悪い部分は理解し、保留し、マイナス行動を減らすことが目的です。

例えば、自分は無能だと無意識で思っていたとすると、無能を隠すために一生懸命勉強したり、依頼された仕事をしっかり納品したりしようとします。これは、反応行動の良い側面です。

一方で、反応行動に気づけずにそのまま頑張り続けると、労働負荷が掛かったり、仕事を断れないなどのネガティブ行動が続きます。そこに気づけないと、一生相手に振り回される人生を送ることになるかもしれないので、反応行動と向き合うスキルを持っておくと、人生で違った選択ができるようになります。

誰もが「隠れた目的」を20個も30個も持っています。自己変容の旅は、それに1つ1つ気づいて、自己理解を深め、自己統合を進めていく道のりになります。現段階で、僕もゴールに達していないので、長い道のりになります。

最初のうちは、自己開示に勇気が必要ですが、そのうちに趣味のようになってきます。「あ、こんな自分がいた」とか「まだこんなことをやっている自分がいる」など、自分が愛おしく、笑える存在になります。

Q4. 役員向けのワークショップなどで、本当に役員の自己開示は進むでしょうか?

【回答】
自己開示が進む可能性は、非常に高いです。
我々は、プロとしてそれを支援していますし、私はずっと役員・管理職クラスに研修をしてきていますので、そのあたりの勘所もあるという感じです。最初は、役員の皆さんも身構えますが、徐々に柔らかい雰囲気にしていきます。

ここには、自分自身の変容による効果もあります。以前は、研修をやっていると「何で気づけないんだ」というようなコントロールの波動を出していましたが、今はそのようなエゴ(確実にエゴ的な波動は相手に伝わります)が薄れつつありますので、受講者側の(危険を察知して防衛するなどの)反応行動は減ってきております。

ただし、全員の自己開示は難しいです。自己開示が遅れる人は2つの対象があります。

1つ目の対象は、その組織の長です。役員研修であれば社長、部長研修でれば役員や事業部長などです。一番上に立つ人が一番自己開示に抵抗感を示します。「実は部下を信用していない」とか、「自分がバカだと思われたくない」などをオープンにするのは流石に抵抗があると思います。事例のA社も、社長を除いて実施しました。この会社は、事前に社長の想いをじっくり1.5時間ぐらいお聞きして、研修設計をしました。そうやって、社長の想いと研修の方向性の整合性を保っています。ある意味社長の権力を借りて、研修を進めています。

2つ目の対象は、本当に自分を隠して、偽って生きている人で、その構造を理解しようとしたとたんに、身体からの抵抗にあいます。「分からない」とか、「自分だけができない」といった防御態勢に入ってしまうとサポートができにくくなります。個別のコーチングなどでは介入しますが、研修ではそこまで介入できないので、抵抗が大きい場合はそれ以上介入しないようにしています。その後のワークなどで、本人は自分の隠れた目的を発見したように装う必要があるので、ちょっと寂しい思いをしますが。

Q5. 役員向けのワークショップに関しては、実際にどのようなプロセスで導入していますか?

【回答】
流れが2つあります。

1つ目は、弊社主催や共催セミナーに参加いただいたり、私を呼んでいただき2時間程度の勉強会を開催して、まずは体験(思考ではなく身体知の領域なので体験してもらう他ない)してもらい、その内容に経営者や役員が共感してもらい進めるパターンです。現在は、それほど大規模な会社を手掛けていませんが、社長が変容する姿に我々も涙を流しながら、二人三脚で進めている感じです。つぼみが開花するような美しさがあります。

2つ目は、役員チームビルディングや働き方改革研修などの名目で、全体の中の1つのコンテンツとして「隠れた目的」などを扱うパターンです。

役員研修含めて実施してきて感じたことは、「心の成長」研修だけでは企業では成立しにくく、「能力の成長」+「心の成長」の両面を扱う研修を実施しています。抵抗がないのは、「能力の成長」が70~80%ぐらい、残りが「心の成長」というイメージで研修を設計しています。

また、研修の前段階で、できる限り役員の皆さんとのインタビューを行い、我々が進めようとしている改革の方向性に賛同いただける人を、数名仕込んで研修を実施します。偶然性が大切なので、余り緻密に設計しませんが、お互いの想いが融合し、必ず良い結果が生まれます。

Q6. 役員の発達段階が低い可能性がある場合、どのように引き上げればよいのですか?

【回答】
発達段階を上げるためには、機会・内省・適切なサポートが必要だとお伝えしました。この中で、組織の上に行けば行くほど、内省の機会が減る傾向にあります。

創業社長であると、自分で決めて、現実世界でフィードバック(売上が減る・社員が辞めるなど)を受けます。それについて、自分を変える=内省しか方法がないために、創業社長の発達段階は上がりやすいと思います。一方で、サラリーマン社長は、現実世界でフィードバックがあっても、部下の問題にできるので、発達段階の向上は遅れがちになると思います。

役員の皆さんには、まずは成人発達理論という学問があり、自分のエゴが社内の問題を生んでいる可能性があることや、何かの限界や制限を役員自らが作っている構造に気づいてもらうことが大切です。

発達段階を上げるためには、内省したり、自分の軸に揺れることが大切なので、まずはそのスキル定着からスタートになると思います。

必ず、習慣化とフォローアップを入れます。

フォローアップ研修での、ある経営者のコメントです。経営者がココに気づけると、組織風土がガラッと変わります。

隠れた目的を理解した上で、自分がどういった行動を取っているか振り返ってみると、多くの阻害行動をしていることに気づいた。普段は1日の振り返りをしないため忘れていることを、文章にすることで、自分自身毎日こんなに気持ちが動いていると気づいた。更に阻害行動をとる自分を分析すると、
①発言を促しても、会議で反応がないとき
②発言者が、自分を正当化し始めたとき
③発言者の、やりたくない気持ち・責任を逃れようとする気持ちが見え隠れしたとき
④自分の中で、相手はどうせ考えていないだろうという思考が湧き出たとき
この4つのパターンがあることが分かった。

Q7. 職種によって、発達段階は異なりますか?営業部門・技術部門・生産部門で何か抑えるべきポイントはありますか?

【回答】
完全に個人的な見解ですが、職種(仕事の進め方の種類)によって、発達段階の促進が異なるように感じています。主体的に問題解決が必要な営業職や技術職は、発達段階が3.5ぐらいまで促進されますが、指示されたことを実行する生産職や事務職は、発達段階が3.0ぐらいでとどまるかと推測しています。発達はその人独自のスピードで進み、また会社・組織などの環境要因によっても大きく左右されます。ダイナミックスキル論によると、個人の発達段階が高くても、会社・組織の環境によって、発揮される能力が左右されるという考え方もあります。

少し理論的に補足すると、発達段階が整数の場合(3.0、4.0など)は、統合のフェーズなので、比較的安定しています。一方で、0.5がつく場合(3.5、4.5など)は、差異化のフェーズなので、少々不安定です。

発達段階3.0の場合は、仕事では言われたことをしっかりやり、プライベートのバランスよく人生を送っている方も多いかと思います。企業の中で発達段階3.0の人は大切な存在なので、あえて発達促進を図らなくても良いとも考えております。製造部門において、係長含めたマネジメント職・スペシャリスト職の比率が20%であれば、残りの80%の方は発達段階3.0に留まることが企業にとって都合が良いかもしれません。

一方で、発達段階3.5の場合は、自分の専門性・特殊性が失われると停滞人材になり反応行動が増える可能性があります。その場合は、4.0へ発達促進を促すことは有効だと思います。専門性・特殊性に加えて、組織の一員として働けるポジションを提供したり、それがうまくいかないことへの内省支援ができればと思います。

個人的には、65歳雇用延長を視野に入れて、ピークアウトする可能性がある人材に対して、ライフシフトする研修も支援していきたいと思っています。これも、自分の内面(もう諦めているとか、自分のパフォーマンスを発揮する機会を奪われたとか)に向き合い、表出できるまでの支援が必要だと思っています。

Q8. 研修は同じ会社や組織が良いのか?違う会社が良いのか?教えてください。

【回答】
目的によると思います。

役員研修であれば、お互いに本音が言える心理的安全性の確保が目的になりますので、同じ会社が良いでしょう。マネジャー研修も、マネジメントの仕組みの定着や1on1の定着が目的になるので、同じ会社が良いと思います。話はずれますが、1on1がうまくいかないのもエゴの問題なので、その側面から進化版1on1という研修コンテンツを用意しております。

逆に、違う会社が良いのは、ベテランクラスのライフシフト研修(新しい自分の軸を見つける研修)などは、自分組織では自己開示が難しいので、違う会社が集まって実施することが有効かと思います。

新入社員・若手社員クラスの研修は、どちらも有効だと思います。

Q9. 島森自身がやっている内省とは、どのような方法ですか。

【回答】
主に二つあります。セミナーでは30分と言いましたが、最近は1時間ぐらいの散歩や、自己開示ができるメンバーとの対話、リフレクション・ジャーナルを書くなど、1日平均で2時間ぐらい内省に時間を割いております。

1つは、毎日自分の心の動きについて、言葉にしています。リフレクション・ジャーナルを書いて、noteにアップしています。リフレクション・ジャーナルについては、以前メルマガ送っていますので、こちら( Vol.109 リフレクションジャーナルのすすめ )をご覧ください。私の場合は、仕事中だったり、プライベートの時間だったり、好きな時間に内省しています。

2つ目は、真に自己開示ができるグループが複数あります。定期的に自分の内面を出し合いながら、お互いに感じていることを共有したり、お互いにフィードバックしたりしています。真に自己開示ができる親友は本当にありがたい存在だなと思います。こういった人がいるだけで、人生が180度変わるような気がしています。どのようなことを開示しても、揺るがない場と言うか、逆に自分が揺れているときに、見守ってくれる場と言うか。
個人的には、そのような場づくりもして行けたらいいなと思っております。

Q10. 日本でインテグラル・コーチングを受けられる機会はありますか。

【回答】
インテグラル・ジャパンでインテグラル・コーチングが受けられるようです(一応、代表の鈴木則夫さんに確認取りました)。以前は、コーチ養成もやっていたようです。
http://integraljapan.net/index.htm

Q11. 隠れた目的の発見など、個人の心に踏み入るリスクをどう最小化するのか、それでも問題が生じた際にどう対応するのか教えてください。

【回答】
実績として、隠れた目的の発見は、セミナーや研修等で500名以上実施していますが、心の不調に発展したケースはございません。まずは、焦点にしているのが、自己開示よりも組織の心理的安全性の確保なので、動画などでお見せした通り楽しく実施しております。冒頭にエゴの話をしたように、徐々にその存在を理解してもらい、体感覚を共有してから進めております。また、強制的に出してもらうことはせずに、あくまでも本人の選択を最優先に考えております。心理的に抵抗する方もいらっしゃいますが、その状態を大切に見守るように心がけております。

最後に

弊社では、成人発達理論に関するセミナーを定期的に開催しております。
成人発達理論についてもっと詳しく知りたい方、興味のある方は、お気軽にご参加ください。
https://www.growthen.co.jp/seminar/cat/jinzai/

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