コラム
猟師さんとの対話を通して
コラム記事
2021/09/13
猟師さんとの対話を通して
執筆者:島森
猟師の杉山さんのご自宅(三重県松坂市)で、猪の穴(ししのあな)プロジェクトの小屋づくりを手伝ってきました。杉山さんは冬場の猪猟が生計のメインです。釣りの名人で、海・川両方得意としています。クラウドファンディングで、野で遊ぶ喜びを分かち合う野遊びの拠点(猪の穴)を作っています。
その日の仕事・遊びは、朝起きて決める
今回は、猪の穴プロジェクトのお手伝いで杉山さんを訪ねました。ほとんど、事前の情報なしに押しかけました。延べ4日ほど小屋づくりをお手伝いしました。
お仕事のサポートとしては、
・木材の調達:小屋づくりの木材を調達に、知り合いの林業さんを訪問
・小屋づくり:骨組みの組み立て+のこぎりやのみを使って加工
・冷蔵庫の調達:冷蔵庫を譲ってもらえるとのことで、知り合いの釣り具屋さんを訪問
を体験しました。
朝起きてから、気温などで、その日の仕事を決めます(暑かったら大工作業はやめるなど)。昼過ぎから釣りに行くこともしばしば。
横から杉山さんを見て、好きな仕事や趣味を楽しくやって、それで食べていける=生きていけるとすると、世の中のビジネスマンは、なんて非効率な働き方をしているかと思いました。毎日がゆっくりと過ぎ、毎日好きなことをやり、仲間にも恵まれ、これで生活が成り立つと思うと、ビジネスマンは、なんて多くの時間を仕事に割いているのか、なんて窮屈な世界に生きているのか、不思議に思いました。
遊びとしては、
・すっぽん釣り:暑いので川に行こうということなり、クラファンの返礼品として調達
・熊野に魚釣り:これは完全に遊びかな
をやりました。すっぽんが釣れるの?という驚きと、後で捌いたものをいただくと、本当に美味しくてびっくりしました。
大工仕事も含めて、初めてのことばかりで、迷惑をかけたと思っているのですが、杉山さんは「こうしてプロジェクトにかかわってくれるだけで感謝」と言ってくださいました。ビジネスの世界ではありえない、お金を交えない交換・交流をしており、そこには本当に気楽さ・優しさがあふれていると感じました。そこに昔の日本にはあったけど、失われてしまった価値観が残っているような。
猟師杉山さんの考え方・自然との向き合い方
車の移動中など、杉山さんと様々な話をしたので、印象に残ったことをシェアします。
【死生観】
猪猟ということで常に死と隣り合わせで、自然の中で自分が命を落とすことは、役割が終えたときだという認識で、自然に身を任せています。蜂に刺されて、アナフィラキシー反応を起こして、2回死にかけていますが、それでも薬の注射針などは持参しないで、自分の死も自然に任せています。4回ぐらい死にかけて、お花畑を4回見たと言っていました。
【獲物の取り方】
命を奪うことの哀しみと、人間が生きていくうえで狩りをしなければならないというはざまで、いかに丁寧に美味しくお肉を提供するかを考えています。お肉を食べてみてびっくりしたのですが、お肉からエネルギーが巡り、今まで食べたことのない美味しさでした。日本人は長い時代、猪と鹿肉でたんぱく質を補給してきたともおっしゃっていました。
【自然との向き合い方】
自然環境的には、自分が子供のころに比べて、自然が大きく破壊されているそうです。川の生物は、1万分の1ぐらいに減ったように思えると言っていました。そんな状況を嘆きつつも、それが起きてしまう現実に批判的にならずに、その中で自分ができる最大限の役割を果たそうとしています。
【お金との向き合い方】
儲かる提案には乗りません。以前、数千万単位で儲けたこともあったそうですが、そのまま人にあげたそうです。自然のサイクルの中で、お金が介しないやり取りを大切にしています。顔が見える人にしかお肉も売らないそうです。
【奉仕の心】
ひっきりなしに電話や訪問があり、釣りなどの相談で人が集まっています。それを嫌がらず、丁寧にお付き合いしています。自分の持っている限りの愛をみんなに振りまいています。
自分にとっては、自分の思考を止めるため、自分の中にある時間の概念を変えるため、自分自身が本当に喜ぶことは何かを見つけるための旅でした。実際に、それに近い生き方をしている方と4日間ご一緒して、本当によい体験になりました。自分の中から湧き出るエネルギーの質が変わったように思います。
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2025/03/31(月) 開催
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