コラム

方針策定のポイント

2021/10/25

執筆者:島森

方針策定の時期になりましたので、いくつか方針策定のポイントをお伝えしたいと思います。私なりの持論ですので、これはいい!と思う部分だけ参考にしてください。

参考図書としては、『良い戦略、悪い戦略』リチャード・P・ルメルト (著)、村井 章子 (翻) が良いと思います。戦略を策定する・方針を策定する方全員に読んでいただきたい書籍です。

今回は、方針策定のポイントを7つお伝えします。

  1. 戦略とは、楽に業績向上・課題解決策を考えること
  2. 戦略策定はフレームワークではできない
  3. 戦略構想は、365日×24時間稼働
  4. 戦略は、スライド1枚で示せる
  5. 役員・部長の実務稼働率は、70%にする
  6. 構想のアイデアは社外にある
  7. 戦略は仮説であり、試行錯誤で磨いていく

1.戦略とは、楽に業績向上・課題解決策を考えること

昔、とある割烹で隣り合わせた社長夫妻にこの話をしたら、かなり抵抗され、「我々は、努力して業績を上げている。楽をしてはいけない」とご指摘いただいたことを思い出しました。当時は、そんな社長の下で働く従業員は大変だな~と思いました。

一般的には、財務目標は高いハードルが設けられます。これを、熱意・努力論でクリアするのではなく、「あ、そうすれば業績が上がりそう」という穴を見つけていくクリエイティブ活動に近いものが戦略構想だと思っています。

主に作戦は2つあると思います。

作戦1)社員に血がにじむような努力をさせてコツコツと業績を上げる
作戦2)これぞというアイデアを見つけて、楽に業績が上がる仕掛けを考える

どちらか1つの選択になるとは思いませんが、作戦1をやりながら、作戦2をいつも模索することが一般的な流れかと思います。

作戦2)を一般的にイノベーションと呼んでいます。

  • 他社に差別化できる技術開発をして、楽に製品を売る。
  • 他社にまねできないオペレーションを確立して、値段をあげてサービスを売る。
  • 他社と連携を図り、顧客開拓を共有する。
  • 他社に自社の製品・サービスを売ってもらう。
  • これから拡大する需要に目をつけて、そこで圧倒的なビジネスモデルを確立する。

などなど、いろいろあると思います。

部下がその戦略を見たときに、「それなら行けそう」と驚くようなポイントを明示することが大切です。つまり、戦略策定とは、まだ見つかっていない穴を見つけるアイデア出しの行為なのです。

2.戦略策定はフレームワークではできない

上記で説明した通り、戦略策定は、ロジカルシンキングというよりアイデア出しに近い行為です。

戦略のフレームワークを使って、状態把握(SWOT分析やファイブフォースモデルはそれはそれで有効)や、問題点把握に使うとよいでしょう。

何がビジネスを拡大するうえで問題なのかを、特定することが大切です。

弊社の人事制度でいうと、
受注したときの金額は高いが、人事制度を策定するサイクルが、5年~30年以上と長く、その時期を見極めることが難しい。また、ほとんどの場合、人事制度構築の意思決定は経営層が行う。
という問題を抱えており、そこに対しての打ち手を考えております。

問題を特定した後は、『アイデアのつくり方』 ジェームス W.ヤング (著), 竹内 均 (解説), 今井 茂雄 (翻訳) という書籍が参考になります。手に取って10年以上になりますが、内容が陳腐化しないのが素晴らしいです。

書籍の抜粋です。

・問題を無意識化の心に移し諸君が眠っている間にそれが勝手に働くのに任せておく
・(アイデアは)その到来を最も期待していないとき―――ひげを剃っている時とか風呂に入っている時(中略)に訪れる

『アイデアのつくり方』

ということで、無意識の領域にボールを投げて、アイデアがふって来るのを待つ感じです。

つまり、アイデアがふって来る可能性は24時間なのです。私も寝ているときに、振ってくることがありました(朝起きて忘れていることも)。

3.戦略構想は、365日×24時間稼働

上記の話から、戦略構想は24時間稼働だと分かると思います。

ここでは、365日という表現を使っていますが、一般的には方針策定の時期があり(例:毎年の1月ごろ)、その時期に戦略構想する方もいらっしゃると思います。

よく考えるとおかしな話です。いつひらめくか分からないので、年中構想しているべきですし、戦略をひらめいたけど、来年の1月まで自分の中に秘めておこうということはしませんよね。

本来は、365日構想して、わっと湧き出たときに表現して、部下に展開するのが一番良いはずです。

個人的には、戦略構想したくなる時期が訪れます(何年かに一度)。そして、いつごろアイデアがふって来るか、おおよそイメージできるようになりました。

4.戦略は、スライド1枚で示せる

研修や人事制度の設計のために、中期経営計画や年度方針の資料をいただくことがあります。多くの企業は、30ページぐらい費やして、方針の説明をしていますが、本当に大切な戦略は、シンプルなものでスライド1枚ぐらいで解説できます。

前述しましたが、部下がその戦略を見たときに、「それなら行けそう」と驚くようなポイントを明示することが大切なので、もしかしたらたった1つのことを伝えるだけで良いのかもしれません。

特に、スローガンはいりません。
・この環境変化が大きい時代に、柔軟性をもって進もう。
・ニューノーマルをキーワードに進もう。
・○○ビジネスのリードカンパニーを目指そう。
・お客様のニーズに応えよう。
は、これを理解したから、何かが始まる訳ではありません。

単なる数字の明示はやめましょう。
・売り上げを1.2倍に!
・利益率を2倍に!
・製造コストを10%下げよう!
などは、誰でも表現できます。

もう一度、言います。そのために具体的にどのような行動をすれば、それが達成できそうなのかを示すことが戦略策定する人の役割なのです。そんなアイデアはすぐに出てこないので、年単位で構想する感じです。

方針を発表したときに、社員から「これは面白そう」「これなら一緒にやりたい」「難易度高いけどチャレンジしたい」みたいな言葉が漏れるような方針を作成したいですね。

5.役員・部長の実務稼働率は、70%にする

戦略を策定するにあたり、忙しい人はできないと思っています。自分の稼働率を70%ぐらいにして、30%は戦略策定に時間を割くといいかもしれません。

日常のオペレーションは、部下に任せ、自分は2週間ぐらいアイデア出しの旅に出るぐらいでも良いと思います。2週間でアイデアが出るとは限りませんが、そのための準備として思いめぐらせる準備ができます。

そして、役員・部長クラスは、日常のオペレーションに関する会議にも出なくてもよいかもしれません。新しい施策の実行に関する部分だけ、一緒に会議に参加して、うまくいかないことについて新しいアイデアを出すようなことも必要かもしれません。

部下を信頼して、戦略構想に時間が取れるように時間配分を変えられたらいいですね。

6.構想のアイデアは社外にある

空いた時間をどこに配分すればよいかというと、社外のコミュニケーションが必要になります。

では、誰とコミュニケーションしたよいでしょうか?

書籍には、「お客様の経営層と会うべきだ」と書いてあります。これは、本当に必要なことで、お客様の会社も経営層が将来を構想しているので、今ではなく、将来何を起こそうとしているかの情報収集は必要だと思います。

「お客様から、こんな構想があるのだけど、○○分でお手伝いをお願いできませんか」とビジネスにつながることもあるでしょう。

個人的な経験では、ライバル会社や同業の方と話をすることがおすすめです。ビジネス環境の認知の仕方、どのようなことで悩んでいるか、(聞ける範囲で)どのような工夫をしているかをお互いに共有することで、面白いアイデアが出てきます。

私は同業の経営者の社長さんと話をすることが、一番アイデアが膨らみます。思い切って、声をかけると、まず断られることはありません。

7.戦略は仮説であり、試行錯誤で磨いていく

「戦略は仮説」は意外に漏れがちな観点です。

『良い戦略、悪い戦略』の書籍には、下記のように書いてあります。

・良い戦略とは、こうすればうまくいくはずだという仮説にほかならない。
・(スターバックスの事例)実験結果を注意深く吟味する有能は科学者のように、お客様の反応を注意深く観察していた。

『良い戦略、悪い戦略』

スターバックスの事例では、ミラノにあるエスプレッソバーをイメージして店舗をスタートさせたが、お客様の動向を観察して、店舗やメニューを変えていった結果、イタリア人からはスターバックスはコーヒー店ではなく、(ラテがメインなので)ミルク店に見えるまで業態が変わってしまった事例も紹介されていました。

つまり、戦略は仮説なので、実行して、修正を繰り返すことが前提になります。完璧な戦略策定に時間をかけるよりも、PDCAサイクルを回す力の方が大切かもしれません。

上記のことを参考にして、方針策定に臨んで欲しいと思います。


社内研修支援サービスでも「マネジメント(方針策定・イノベーション編)」研修を提供しています。テキスト抜粋版は下記ページよりダウンロードしてご覧ください。

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